医薬品の開発・製造、販売まで幅広い業務を行っている製薬会社では、たくさんの薬剤が働いています。
主な仕事は長い年月と費用をかけて新しい薬を開発する「研究職」、厚生労働省に申請を行うために必要な臨床試験(治験)のため、医師と企業の橋渡しを行う
「開発担当者」、そして新たに開発した薬の有用性を医療の現場で働く医師などに理解してもらうために、情報提供を行う「医薬情報担当者(MR)」です。

製薬会社の薬剤師

医療用医薬品メーカーと大衆薬メーカーを合わせると国内には約970社もの製薬会社が存在しています。その事業領域は非常に広く、そこで活躍する薬剤師の数も多いのですが、すべての人が研究・開発に携わっているわけではありません。数ある業務の中でも花形である新薬の研究・開発は、採用基準のほとんどが修士課程以上となっていますので、この分野を目指すなら大学院への進学も視野に入れておく必要があります。

1つの医薬品が誕生するまでには、基礎研究に始まり、新規物質の発見、安全性に関する研究、臨床試験(治験)と、長い年月と莫大な費用がかかるため、会社の存亡は研究者にかかっているといっても過言ではありません。新聞やテレビなどで報道されているように、外資と競争激化や大型のM&Aが進んでいる今日、会社の生き残りを掛けて、各社はますます新薬の開発に力を注いでいます。

開発の第1歩は、研究課題となる分子を見つけることから始まり、天然の物質から未発見の化学物質を探す研究などが行われます。そして、新しい化合物を候補として創製します。創生された物質は、スクリーニング(ふるいわけの意味)というプロセスで、その効果や有用性について簡単な研究が行われ検討されます。そして、物質の安全性や科学的な性質を調べる「品質試験」と動物での安全性を確かめる「非臨床試験」を行って、十分な効果と安全性が確認されれば、いよいよ新薬の候補として、実際に人に投与する治験を行なうことになります。

治験は製薬会社では行なうことができないため、大学病院国立病院などの担当医師に、臨床データを提供してもらう必要があります。開発担当者は、ここで研究者と担当医師とのコーディネーター的な役割を果たします。契約を円滑に行うためにも、医療機関や医師と信頼関係を築くことができるコミュニケーション能力が求められます。もちろん、そのために必要な通常業務もおろそかにするわけにはいきません。開発担当者は、治験までのデータを揃え、担当医に相談した上で、「プロトコル」と呼ばれる試験実施計画書などを作成します。

治験が無事に行なわれ、そこで得られたデータは開発担当者が回収し、研究所で解析されます。そこで新薬の有効性や安全性を再度確認し、その結果をまとめあげ、最終的には厚生労働省に申請するための資料を作ります。

志望分野別の就職活動と留意点

研究職と開発担当者は先述の通り大学院卒業者の採用が多く、大学卒業者の募集が少ないのが現状です。製薬会社には、MR(医薬情報担当者)や医師からの質問に答えたり、MRに新薬の説明をしたりする学術職、市販後調査を行うPMS、製薬会社で薬剤の管理を行う管理薬剤師といった仕事があります。学術職は採用数が少なく、大学院卒業生でないと採用しない企業もあります。PMSは外資系で増えている仕事で、企業によっては学術職に含まれていることもあります。管理薬剤師も採用数はあまり多くありません。

調剤薬局やドラッグストアは、2〜6月にかけてセミナーを行っています。地方では人材が不足しているところも多いため、それ以降でも募集を行っているところもあります。ドラッグストアの場合は、大衆薬の販売が主な仕事になります。調剤を行っているところも増えてきましたが、担当が分かれているケースもあるので、「調剤業務をやりたい」という方は、採用された場合の仕事内容を予めチェックしておきましょう。また、ドラッグストアは夜遅くまで営業している店舗が多いため、交代性勤務が主流となります。

学生間で依然として人気の高い就職志望先である病院ですが、採用数自体が減っているため、内定を得るのは比較的難しいでしょう。大学院で勉強を続けた後、病院に就職する方もいます。また、研修生や研究生として採用されることもありますが、ほとんどのケースで給与は支払わず、研修期間後に採用されるとも限りません。

化粧品会社や食品メーカー、化学メーカーなどの一般企業を希望する場合は、各会社によって採用時期が大きく異なりますので、HPや就活専門のポータルサイトなどで調べておきましょう。このほか、医薬品の卸企業で働くという選択肢もあります。医薬品は、通常、製薬会社から卸を経て病院や薬局に販売されます。卸の販売担当者として価格国章などを行うのがMSと呼ばれるお仕事です。卸の企業には、学術職や管理薬剤師もいます。

この数年、薬学生に注目されている新しい業態として、製薬会社から治験業務を受託するCRO(受託臨床試験実施機関)、医療機関と契約して治験業務を支援するSMO(治験実施施設管理機関)があります。それぞれの機関ではCRA(臨床開発モニター)やCRC(治験コーディネーター)が所属しており、臨床試験が実施される医療機関に派遣され、医師や医学ボランティアのサポートを行っています。

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